隣の先輩

「いいよ。気にしないで」


 西原さんは振り返ると、優しい笑顔を浮べていた。


 そのとき思ったのは彼には笑顔がすごく似合うということ。


 私はもう一度頭を下げると、自分の教室に入ることにした。

 教室に入ると、至るところから人の視線を感じる。


 でも、すぐにその視線は感じなくなる。


 初めてということで、人が来るたびに気になって見ているのだろう。


 同じ中学だったのだろうか。教室の奥の机のところに男女が数人か固まっているのが見える。


 もう既に席が決まっていたので、窓際にある自分の席に座ることにした。


 誰も知り合いがいない。だからといって入学式の初日に既にできている集団の中に入っていく勇気もなかった。