隣の先輩

 西原先輩のことがなかったら、思わず見とれてしまいそうな感じで、すごく優しい人だって素直に思うことができた。


「ありがとうございました」


 私は頭を深々と下げる。


 これ以上ここにいるのが惨めな気がして、その場を足早に立ち去ろうとした。


 来た道を引き返し、先輩の脇をすり抜けようとしたときだった。


 突然手首をつかまれた。


 つかんだのは西原先輩。


 私は反射的に、西原先輩を見つめていた。


「俺の用事が終わるまで待ってろよ」


「どうして私が待っていなきゃいけないんですか?」


 今年度に入って一番可愛くない言葉を、このシーンで口にしていた。

自分で自分が嫌になるくらいの可愛くない言葉。