隣の先輩

　依田先輩は「じゃ」という言葉を交わすと、教室に戻っていく。

　先輩のところに行くと、緊張しながら問いかけた。


「どうしたんですか？」


　さっきの会話を顔に出さないように、できるだけ笑顔でいようと思った。


　そんな私の目の前に紙袋が差し出される。


　意味が分からなかったが、受け取って中身を確認してから納得する。


「これって」


　顔が赤くなるのが分かった。そういえば、いつもより鞄が軽かった気がする。


「今朝、たまたま家の人と会って、お弁当を忘れていったと聞いたから。

早めに届けたかったんだけど、学校着いたのがぎりぎりで。

補習の前に弁当を持っていることだけでもメールしようと思ったら、アドレス知らないことに気づいて驚いたよ」


　先輩はそう言うと肩をすくめて、苦笑いを浮かべていた。