「どうした? 元気ないね」
「そんなことないよ」
宮脇先輩という人のことを考えていたこと、先輩の携帯の番号を弟が知っていたから元気がないなんてそんなことを愛理に言えるわけもない。
机の上に出ていた英語のテキストを机の中に片付けようとしたときだった。
愛理の携帯が震えているのに気づいた。
彼女は携帯を取り出すと、画面を確認していた。
彼女は眉をひそめる。
「兄貴からだ。珍し」
彼女の親指が携帯のキーの上で動く。メールでも読んでいるのだろう。
私が窓の外に視線を向きかけたとき、驚いたような愛理の声が聞こえてきた。
「西原先輩が真由に渡したいものがあるんだって。今から廊下まで来れるかって」
「え」
その言葉に反応して思わず立ち上がる。



