隣の先輩

「行ったことある?」

「ないけど、多分分かるよ。それに真由が行ったら、帰ってくるのが夜明けになるんじゃない?」


 裕樹はいつもと同じように淡々とした表情を浮かべている。


 言い返せないのが辛い。裕樹は少なくとも私よりは方向音痴じゃないみたいで、そのことを言っているんだろう。


 そのとき、後ろから笑い声が聞こえてきた。


 振り向くと、そこには先輩の姿があった。


「先輩?」


 いつの間に帰ってきたんだろう。


「お前、弟にまで危ういと思われているんだ」


 その言葉に顔が熱くなるのが分かった。