隣の先輩

「森谷君の家は?」


 彼はああ、と言うと天を仰いでいた。


「俺の家はこの少し先」


 それだけを言うと、帰っていく。


 私は彼の後姿を見ながら、笑顔になると、マンションの中に入っていくことにした。

 エレベーターに乗り込もうとしたとき、すれ違いに見慣れた姿を見つける。


 そこに立っていたのは今朝もみた弟の姿だった。


「真由か」


 私よりも先にそんな言葉が聞こえてきた。


「どうしたの?」

「買い物」


 もう背丈も私より大きくなったとはいえ、まだ小学生なんだからという気持ちがある。


 だから裕樹にこう告げていた。


「私が買ってきてあげるよ。どこに行くの?」


 裕樹が告げたのは私の聞いたことのないお店。画材店なんだろう。