隣の先輩

「忘れていた」

「どう? 分かりそう?」

「うーん。なんとか。ここ教えて」

 彼が指した問題を要点をまとめて教える。一度解いている問題なので、分からないということはなかった。


 十分ほどで終わり、私たちは教室を出ることになった。


「鍵は返しておくよ」


 森谷君はそういって、教室の外に向かう。


 私はジャージの入ったバッグを手に取った。


 少し歩きかけた、森谷君の足が止まる。


「安岡さんの家はこの近く?」


 私の住むマンションの名前を伝えると、森谷君は驚いたような顔をしていた。