隣の先輩



 先輩の顔から、からかうような顔は消えていた。


「だってさ、仕方ないんだよ。だってこいつすぐに迷子になるからさ。だから迷子にならないように手をつないでいただけだって」


 と涼しい顔で言う先輩。


 この人は突然、なんてことを言うんだろう。

「先輩」

 大声でそう言ったけど、時既に遅し。


 依田先輩は驚いた顔をして私を見ていた。


 最悪。


 でも、昨日、先輩が手をつないでくれたのはそのためだったんだ。


 理由を初めて知って、少し残念に思ってしまう気持ちもあった。