隣の先輩


 着くのは十時くらいだろうか。


 電車の外の景色がゆっくりと流れていく。


 でも、私と窓の間には先輩がいたこともあり、あまり窓をじっと見つめることもできなかった。


 顔を伏せ、いつもと違うリズムを刻む心音を落ち着かせようと試みる。



 でも、そんな努力もむなしく、心臓はいつもより早く動いてた。


 そのとき、先輩が欠伸をするのに気づいた。その目には涙が浮かんでいる。


「眠たいですか?」

「少しね」


 彼の目には涙が溜まっている。澄んだ瞳がきらきらと光って見えて、今までと違う先輩の姿を見たようなそんな気分になっていた。