駐車場に車を駐めて目標であろう建物に足を向ける。

 誰もいない駐車場は、ぽつんと街灯だけが2人を迎えていた。

 少年が薄明かりを頼りに見回すと、ベリルが歩いていく建物は他の建物よりも少し離れた場所に建てられている事が窺える。

 何か特別な建物なのだろうか? まるで、ひっそりと目立たないように建てられているように感じられた。

「ベリル!」

 建物に入ると、白衣を着たひょろ長い青年が嬉しそうに両手を広げた。

「状況は」

「もうちょいってトコ」

 そのまま奥に進んでいくベリルのあとを白衣の青年が追い、アザムは訳も解らないまま2人の背中を追いかける。

 鈍い金の髪を後ろで束ね、メタルフレームの眼鏡から青い目が覗く白衣を着た青年はベリルを羨望(せんぼう)の眼差しで見つめた。

「本当に観察していいの?」

 子どものような輝く瞳で問いかける青年を一瞥し、無表情に応える。