「あのね、これ、私の本じゃないんだ。 図書室のを借りてるの。 読み終えたら教えるから、そしたら図書室で借りてくれる?」 すると、奈良坂君は首をかしげながら言った。 「図書室の本の借り方知らねえ」 「え、あー、そうなんだ。 でも司書さんも当番の図書委員もいるし、行けば教えてくれるから大丈夫だよ」 去年図書委員だったから、そのへんは詳しい。 うちの学園、すごく蔵書数が多いのに、図書室を利用する生徒、少ないんだよね。 だから、ちょっとでも足を運んでくれた生徒には、至れり尽くせりなんだ。