「この部屋さ」

「うん」

「俺の父親であるあの人からのプレゼントなんだ」

「えっ……?」


戸惑った表情の栞に、俺は牛フィレ肉のステーキにナイフを入れながら説明した。


「毎年クリスマスイブにこのホテルのスイートを予約してくれるんだ。
お袋と俺にって」

「え、そうだったの……」

「でも、今までは使ったことなかったんだ。
お袋はあの人からのプレゼントは受け取れないって言い張ってた無視してたし、
俺も一人でこんな広い部屋に泊まる気になれなかったし」

「たしかに、一人で泊まるには広すぎるね」

「だから、今年初めてここに入った。
俺、生まれて初めてあの人に感謝してる。
あの人のおかげで、栞と二人きりでイブを過ごせるんだからな」

「う、うん……」