そのとき、車がうちのマンションに着いた。 私は奈良坂君に「ちょっと待ってて」と伝え、ケータイをつないだまま車を降りた。 「どうもありがとうございました」 お礼を言って頭を下げると、高部先生は軽く手をあげすぐに車を出して行ってしまった。 エントランスに入りながらまたケータイを耳にあてた。 「もしもし、奈良坂君? 高部先生、帰られた。 私ももうマンションに入ったよ」 『そっか。 じゃあ、あさって』 「あ、うん、じゃあね」 回線が切れる音を確認して私もケータイを閉じた。