「奈良坂君……」 ちらっとこっちを見た高部先生と目を合わせてから、通話ボタンを押した。 「はい」 『明日香?』 「うん」 『ノート、サンキュ』 「ううん、もうすぐ期末だからと思って」 文化祭委員になったとき、連絡用にと番号を交換してあったんだけど、奈良坂君から実際に電話をもらうのは初めて。 回線を通して聞く奈良坂君の声は、直接話すときより甘く聞こえてドキドキした。