「送ってくよ」 「いえ、大丈夫ですから」 奈良坂君の家を辞するとき、玄関先で私と高部先生が押し問答をしていると、奈良坂君のお母さんが間に入ってきた。 「栞さん、送ってもらいなさい。 こんな暗い道を一人で帰してあなたに何かあったら大輔に叱られちゃうわ」 「はあ……」 そこまで言われちゃったら断れない。 私は高部先生の好意に甘えせてもらった。 高部先生がお友達から借りてきたという車の助手席に乗せてもらい、奈良坂君のお母さんに手を振って別れた。