すると、一瞬の間をおいて、奈良坂君のお母さんは私と高部先生の顔を交互に見た。
「ね、栞さん、今、高部先生にケーキを頂いたの、食べていかない?
先生も少しなら平気でしょう?
さ、あがって、どうぞどうぞ」
にこやかに私と高部先生の後ろに回りこみ、私たちの背中を軽く押す。
「えっ?
いえ、私は……
これ以上遅くなると母が心配しますし」
私はとっさに断った。
奈良坂君のお母さんと一緒にケーキなんて、そんな心境になれないよ。
だって、このひとはお父さんと……
私が固辞すると、奈良坂君のお母さんは軽やかに言った。


