すると、奈良坂君のお母さんは私に一歩近づいた。 「まあ、あなたが。 お父様とは昔なじみなのよ、聞いてらっしゃるかしら?」 「はい、少しだけ。 留学先で一緒だったと聞きました」 私がそう答えると奈良坂君のお母さんはにっこり頷いた。 私は焦った。 一刻も早くここから立ち去りたい。 奈良坂君のお母さんと顔を合わせるつもりなんてなかったのに。 私はノートのコピーが入った袋を差し出した。 「あの、これ、今週の授業のノートです。 もうすぐ期末試験なので。 奈良坂君に渡してください」