俺は止めていた息をそっと吐き出した。 「そうか。 ……明日香の親父さんって名前なんていうんだ?」 「え?名前? 進(ススム)だけど?」 「ふうん」 「うちの父がどうかした?」 「いや、なんでもない」 しかし、全然なんでもなくはなかった。 お袋に確認しなきゃな。 俺は駅に入りつつある電車の出口に向かいながら明日香に言った。 「先に行っててくれ」