「結婚した翌年にね、会社の研修でお父さん一年間イギリスに留学したの。
お父さんが帰国した翌年に栞が生まれたのよ」


「ふうん、そうなんだ」


私が感心して父を見ると、父はそそくさと食事を済ませ、席を立った。


「ごちそうさま。
風呂入ってくる」



えー、もう少し詳しく聞きたかったな。


留学の話も、奈良坂君のご両親の話も。


私は名残惜しく感じながら父を見送った。