母は、最初、奈良坂君の容姿に驚いたようだったけど、丁寧に挨拶されたとたんに笑顔になった。 「まあ、わざわざありがとう。 せっかくだからあがっていって、お茶でもどうぞ」 「いえ、今日はもう遅いので、これで失礼します」 「あら、そう?残念だわ。 じゃあ、気をつけて」 奈良坂君はまた一つお辞儀をすると、車の前を回って助手席に乗り込んだ。 奈良坂君がシートベルトをしめると、高部先生は母に軽く会釈して車を出した。 私は母と並んで車を見送り、家に入った。