リビングに顔を出すと、お袋が見ていた雑誌から顔を上げた。 「あら、終わったの? 今日はモンブランを買ってきたのよ」 そそくさとケーキの用意をするお袋の前では、さすがの高部センセーももう文句を言えない。 黙って俺を睨んできたけど、そんなのは痛くもかゆくもない。 これで貸しひとつ消化。 俺は、いい気味だ、と内心ほくそ笑んでいた。