バカらしい相手だが、現実に誰かが囚われの身となっているのなら助けなければならない。

 危険な思考の持ち主もなんとかしなくては……ベリルの口から何度目かの溜息が漏れる。

 長年、生きてきたがこんな事例はなかなか珍しい事だった。

 そう思うと、自然と笑みが浮かぶ。

 飽きる事などあり得ない。世界は日々、動き続け新しい出来事が生まれている。

『人の世とは、かくも儚くあり確たるものにして移ろいやすし』

そう謳(うた)った奴がいたな……と、思い出す。

「はて? 何十年前に聞いたかな」

 1人とぼけてつぶやいた。