「では、次に魔族王都襲撃事件について説明します。」

ここは授業中のある教室。

ただでさえストーブで温められた空気で眠気をさそうのに、先生の説明と言う名の子守唄も加わっては、眠気を倍増させる道具にしかならない。

「ではこの事件の略式は?ヘレン。」

「DCS事件です。」

「正解よ。10年前、王都ガルデローベでは魔族による襲撃がありました。しかし、その攻撃は突然おさまり、再び平和を取り戻しました。」

「どうして収まったんですか?」

「今だにその謎は解明されていませんが、学者の考えでは主犯核が何らかの理由で諦めたか、死亡したと考えられています。」

へぇ〜、と皆が感嘆する声を聞きながらあたしは夢の中へ落ちていった。



「――ク、ミルク!」

「ん…」

「たっく、いつまで寝てるんだよ。もう放課後だぞ。」

「え!ウソ!?」

教室は夕日で真っ赤に染まり、クラスメイトも私としかいなかった。

「ガーガーイビキすごかったぜ」

「イビキなんてかいてないもん!!」

「どーだか?」



「もう真っ暗だな」

あたしは答えなかった。

いくら否定しても「はいはい」と流すだけで聞き入れてくれない彼に怒っていたからだ。

となりで呆れるようにハァとため息をついた。

「月が赤い…」

「気味わりー…」



「おばあさん、ただいま」

「おかえり」

「おかえりなさい」

「さん!今日はどうしたんですか?」

「」

「どうしたの?おばあちゃん」

「実は、この手紙を王都まで届けて欲しいんだよ」

「王都まで!?手紙を?」

「あぁ。とても大切なものなんだ」

「でも、王都までってかなり遠いだろ」

「そこで、クリスくんにもついていって」

「オレも?」


「」

「」

「それなら私一人で行けるよ!」

「いけません。」

「」

「」

「」




「まぁね。あれは僕もビックリした。」

「しかも出発が今日だなんて!」

「」