グラウンドに着くと、夕陽に照らし出された一つのシルエットだけが映し出された。その影に、一歩、一歩と近づく。
後ろ姿ではあるけど、髪型や背格好は、私のよく知っている人。制服とはまた違った雰囲気に、胸が高鳴る。
今、手にしているチョコ菓子に祈りを込め、勇気をもらった。
「奥村くん?」
「茶谷? 偶然だな」
違うよ。私は、貴方に会う為に来たの。
「祥子は来ないよ」
「そっか。そういう事か」
大地くんは、何かを納得したのか頭をポリポリと書き出し、ハニカンだ。
頑張れ、私。
「あのね、今日はちゃんと焼けたよ。心を込めて作ったの。約束……したから」
違うでしょ。
そんな事を言う為に来たんじゃないんだから。
「あ、悪りぃな」
まだ、何も気持ち伝えていないのに、涙でそう。



