でも、そんな基本をどうして今更言うのかしら。
「さぁ、皆さんの愛をタップリ分けてあげて下さいね」
今日になってから、改めての教えで作ったクッキーは不恰好で、とてもじゃないけど誰にも見せられない。
幸いにして、男子たちは技術の授業だから、無かったことにしてしまおう。
味は、意外にイケてる……と思う。
ミックス粉も侮れないわね。
教室に戻ると、他の女子たちはウキウキと男子軍団にさっき焼き上げたものを渡していた。
深田さんは、もちろん大地くんに。
チラッと、横目で私を見ては、勝ち誇った顔をして。
「茶谷は無いの?」
「こ、焦がしちゃったんだ」
焦がしてはいないけど、形が旨く纏まらない上に、ヒビが沢山入っている。
とてもじゃないけどお披露目出来ない。
「あら、やっぱり貴女は、何をやっても鈍臭いのね」



