時計を見ると10時を回っていた。
いけない。
さすがにもう帰ろう。
あたしは慌ててバッグに荷物を詰めて、歩き出した。
会社の中ももう真っ暗で、あたしは少し早足で歩いた。
気味悪いなぁ。
早く出たい。
てか、何も出てこないでよぉ?
怖くて仕方なくてあたしは走り出して、会社を出た。
すると……。
「あ!」
ビクゥ!!?
突然聞こえた声にあたしは大きく肩をビクッとさせた。
誰!?
声のする方に顔を向けると、ユラッと動く影。
その影はあたしに近づいて来た。
え!?
何、もしかしておばけ!?
やだやだやだ!!
何で出てくるのよぉ……。
逃げたいけど恐怖で足が動かない。
涙目になってその影から目を逸らせないでいると、月明かりがその影を照らした。
「嫌ー!!出たぁ!!!」
悲鳴を上げた瞬間。
「オレだよ!オレ!」
……え?
キョトンとして顔を上げると、月明かりに照らされた人の顔を見る。
その顔は……。
「りっちゃん!?」
驚いて目を丸くして名前を呼ぶと、りっちゃんは笑顔で言った。
「そうだよオレだよ。」
りっちゃんの顔を再び確認して、あたしはホッとした。
「何だぁ……びっくりしたぁ」

