「楠田くん、今日イヤホンだよ」

「めずらしくない?」

「なんか…楠田の雰囲気、変わった…?」





あぁ、クソ。



イヤホンなんか、してこなきゃよかったんだ。




嫌な声が全て耳に入る。




みんな黙れよ。




「なぁ、楠田……?」




トントン。



軽いリズムが俺の肩に刻まれた。



振り向くと…、見覚えのある顔。




「あのさ、俺、前から楠田と話してみたかったんだよね…」

「……?」




いつの間にか、俺の周りには人だかりができていた。



クラスメイト全員が集まってきていたんだ。




「俺もっ」

「私もだょ」

「ここにいるみんな、だろ?」




初めてだ。


こんなにも沢山の人に囲まれるのは。


沢山の人に…求められるのは。





「……サンキュ」




ぎこちなかったかもしれない。



怖かったかもしれない。




けど、頑張ったんだ。




この時、何年ぶりかに笑顔を見せ、人を求めた。