時間は刻々と過ぎ、ライブも終わり、客が続々とライブハウスを出て行った。

ハヤトや他のメンバーは後片付けや、売上の集計をしていると、所用で出かけていたカツミが、急いだ様子でライブハウスに顔を出してきた。

「問題発生だシンっ!工場の一つがサツに抑えられた。何人かパクられたから、時期にここにもサツが来る可能性が高い。急いで逃げるぞ」

カツミのこの一言で、全員に緊張が走った。時期に密売がバレるとは思っていたが、こんなにも早い段階でバレるとは思っていなかったのだ。

「解った…全員、この場にある麻薬の痕跡と金を集めたら、一時的に身を隠せ。ほとぼりが冷めた頃に、俺から連絡を入れる。」

シンはその場に居る人間に、的確に指示を出すと、皆が急いで片付けを開始した。ゴミなどはそのままで、余ったマリファナはシンの車に詰め、金はカツミが預かる事になった。

ハヤトは、この展開を見て、不思議に思った事があった。それは、シンがあまりにも冷静すぎると言う事。それに、カツミも入ってきた時こそ慌てた様子だったが、よく見ると、カツミも少しも慌てていないような気がするのだ。

全てが想定の範囲内。

やっている事が違法なので、警察にマークされる事自体が、想定の範囲内だと考えても、不自然過ぎるぐらい、冷静なのだ。

だが、その様子を不審に思いながらも、全ては空想の中の産物でしかない。ハヤトは、身仕度を整えると、ライブハウスを後にし、シン達とは別行動をするしか選択肢がなかった。