神への挑戦

だが青年は、シンジの態度に怒る事はなく、静かに振り返ると、シンジの肩に手を置き、声をかけた。

「そろそろ『匂い』をつけても良い頃だろう。作戦通り行動を開始させて…」

「解りましたジンさん。彼等に伝えておきます…」

「それともう一つ…『PMレイン』の製造を急がせといて。どうやら、ジャッジタウンのマスター達が、俺の存在に気付いている様だからね。このチャンスを逃す手はない」

ジンは妖しく微笑み、シンジに語りかけた。シンジはそんなジンの様子にも、表情の形を崩すことなく、形式的に軽く頭を下げ、ジンの前から姿を消した。

「全てはシナリオ通りに事が進んでいる…実につまらないな」

ジンは再度、夜空を見上げながら、いつもの柔らかい表情でそう呟いた。








ライブハウス『lucky Ster』

貸店舗だったこのライブハウスに、たくさんの若者が押しかけていた。

時を遡ること昨日の夜…。

「あのライブハウス開店するんだ…そしてそこで、加工したマリファナの販売をするのか」

ハヤトは事務所に居たエースと連絡を取り、こうしてエースの事務所に顔を出していた。

「あぁ。今までは、ホワイトテイルズのメンバーが、客と接触して販売していたんだが、急に、根城にしていたライブハウスを開店させて、あそこで販売する事になったんだ…エースはこの展開どう思う?」

エースはハヤトの話を聞くと、タバコをふかしながら思案していた。

「何かキナ臭い匂いはするな。今まで通り、販売している方が、リスクは間違いなく低く済むのにこの展開は変だ…」

「俺もそう思う…まだチームに入って日が浅いから、何とも言えないが、今までの販売方法なら、俺みたいな内密者がいない限りは、警察にマークされる事は限りなくゼロに近い。そう断言できるぐらい、販売は慎重に行っている…」

「製造、運搬、販売と三拍子揃ってチーム内でこなしているみたいだからね。麻薬販売のフランチャイズ展開ってくれば、そうだろうな」

ハヤトがこの組織に潜伏して解った事は、まさしくこれだった。二人のリーダーを筆頭に、メンバーを構成してはいるが、シンとカツミ以外は、全てのメンバーを把握している人間はいないのだ。