「これは、とあるジャーナリストの元に送られた手紙だ。そのジャーナリストは、私達の内部の人間だったからこうして私の手元に渡ったのだが…興味深い内容が書かれているだろう?」

上座に座っている男が話している間、他の面々は、手渡された手紙のコピーを読んでいた。

「確かに興味深いわね…明らかに私達に対する挑発だわ」

一番下座に座っている女性が一番先に、言葉を発した。

「なるほど。この差出人のミストってのと、未成年の一斉麻薬密売の親玉らしい組織の名前が一致している訳か…」

女性の言葉を合図に、各自が思い思いの事を口にし、様々な憶測が会議室内を支配した。そんな中、上座に座っている人間が、手を叩き、皆を黙らせた。

「議論はまた後ほど頼むよ…取りあえず、すぐに調査を開始させ、身元を洗わせたが、何も出てこなかったとだけ言っておこう。指紋はもちろん、筆跡鑑定もね。もちろん、住所は架空の場所だった」

「それぐらいは当然だろう。私たちの事を知っている人間ならな…」

「知っている人間ならか…ならその人間達は、どうやって私達の情報を手に入れたんだ?」

上座の質問に、会議室居る皆が考え始めた。だが、そんな中…。

「その様な事を考えても仕方がないかと思いますが。問題は、その組織が今後どういった対応を取るのかが問題だと思います」

年齢的には一番若いと思われる男性が、ここで初めて口を挟んだ。他の面々とは違い、敬語を使用しているところから考えると、地位的には一番下の人間である事がうかがえる。

「そんな事は解っておる。だからこうして皆を集め、会議を開いているのではないか」

上座の隣の男が、少し不機嫌な様子で、ぶっきら棒に答える。すると一番若い男は、少し苦笑いを浮かべる。

「それもそうなのですが…ここは皆さん、今回の件、私に一任して貰えないでしょうか?」

そして、突拍子もない話を切り出した。