「ライブハウスでも聞いた名前だな。カツミって一体誰なんだ?」

ハヤトは、なるべく違和感のない様に、シンに聞いてみた。写真で見ているので、カツミの顔は知っているが、性格までは解らない。

参考までに、カツミが居る場所に着くまで、ハヤトの中で作戦を練る事にしたのだ。

「カツミは、ブラッグウイングスのリーダーをしている人間だ。テツヤは、俺の傘下に入ってもらうから、ホワイトテイルズのメンバーって事になるが、実質俺達は同じチームみたいなものだから、カツミにも挨拶してもらう事になる。まぁ、人柄は会ってみれば解るさ…」

シンは面倒なのか、カツミの性格を、ハヤトに話してはくれなかった。ただ、形式的な挨拶をすませるだけなので、そこまで説明する必要はないと考えたのかもしれない。

ハヤトにしても、無理に聞き出す事はせず、そのまま二人の会話を終了させてしまった。

シンの運転する車は、どんどん都心部を離れ、とうとう東京を離れてしまった。そして、内陸方面に車を走らせると、ある場所に到着した。

そこは、都心に割と近い場所にある町なのに、少し活気に欠ける町であった。少し車で走れば、高速の降り口付近に真新しいアウトレットモールなどがある、歓楽街があるのだが、この場所は歓楽街から少し離れすぎている場所。

言わば、中途半端な立地条件の町なのだ。

中途半端な場所にあるが為に、人々に注目されず、時代の流れに置いて行かれた…そんな様な印象を受ける場所だった。

昔ながらの商店街は今も健在しているのだが、客足が遠のき、半分以上の店のシャッターが、まだ日が昇っているにもかかわらず締まっている。人々の活気もほとんどなく、バブルが崩壊し、経済の不調をもろに受けた場所であった。

シンの運転する車は、そんな商店街の中に入った。