ある意味、一対一のタイマン勝負。他の奴等の機嫌など取る必要がないのだ。

要は、大金が動く仕事で重要なのは、使えるか人間か使えない人間か。ハヤトは、気負った様子もなく、淡々とシンと向かい合い、言葉をぶつけた。

「…解った。お前を俺達のメンバーに入れよう」

その様子をみていたシンが、ハヤトをメンバーに加える事を承諾する。すると、その判断が気に食わないのか、他のメンバーの一人が、シンに食い下がる。

「ちょっと待てよシンさん!カツミさんの許可も取らないで良いのかよ?」

周りで様子を見ていた、男が少し慌てた様子で、シンに話しかける。

「問題ねぇよ。アイツには俺から言っておく…それに、アイツは俺のやる事に口出しはしない。ところで、お前…名前はなんだ?」

シンはここで、ハヤトの名前を聞いた。

「俺の名前はテツヤだ。よろしくな…」

ハヤトは自分の名をテツヤと名乗り、偽名を使った。これも、あらかじめ決めていた事だった。

コイツ等がジン達と関係がある場合、ハヤトの本名を名乗る事は、リスクはあっても、利点がないからだ。ハヤトがこなさないといけないのは、あくまで潜入捜査。

身分がバレる行為は出来るだけ避ける必要がある。

「おう。そうと決まったら、自己紹介と歓迎会をしないとな…テツヤは形はどうあれ、俺達の仲間になったんだ。俺はお前を歓迎するぜ…」

シンは、先ほどまでの険悪な雰囲気を軽く消し、少しだけ表情を崩した。そして、右手を差し出し、握手を求める…。

ハヤトはその雰囲気を察し、シンに右手を出し、握手を交わした。

「こちらこそよろしく…」