神への挑戦

「でもそんな世の流れの基礎を作ったのは片桐さん…アナタだ。投げ捨てるだけなら誰にでも出来るんじゃないですか?今の話を聞く限りアナタは現実から逃げただけに聞こえますよ」

「それが事実だろう。だが私は、自分では一線から身を引いたと考えておるよ…私に代わる存在を統べてな」

話が重複している気がする。だが…。

「…ジンですか」

片桐さんが言いたい事とは多分ジンの事なのだろう。そうでないと話のつじつまが合わない。

「自分には睡蓮会の今を咎める資格がないから、ジンを通して自分のしたいことを実現しようとした。そういうことですか」

「………」

この無言は肯定と取って良いだろう。俺みたいな若造の言葉を否定することに躊躇する様な人には見えないし。

「片桐さん。アナタは卑怯ですよ。自分の手を汚すのがそんなに嫌ですか?」

「それは違う」

黙って聞いていた片桐だったが、今度はすぐさま否定の言葉を言った。

「私はジンやゲンを利用しようと考えていた訳ではない。出来れば恙無く育ってほしいと思っていた…だがそれが無理だとすぐに分かってしまったのだよ」

すでに長い時間俺と片桐さんは会話をつづけていた。外はとっくに夜の帳に包まれており、日中の蒸し暑さが嘘のようにジメジメとした湿度は感じない。

それどころかその身に感じていたのは、無菌室な匂いとは逆の自然な緑の匂いだった。まさに睡蓮会の地下の様な完全に作られた匂いとは逆の匂いだ。

「あの子達は他の子供とは何かが違った。施設に暮らしていた時に処方されたPMレインの影響だったのだろう…あの時の姿は今でも忘れられない」

眉間にしわを寄せ、そう答えた片桐は苦痛の表情を浮かべる。

「薬の効き目が切れるにつれ精神状態が不安定になっていった。それも時間が経つにつれ酷くなる。壁に頭を打ちつけ、今まで覚えたのだろう言葉を永遠に叫び続ける姿。感情のコントロールが出来きない人間の姿は見て余りあるものだったよ」