神への挑戦

だから俺はこの人が睡蓮会を創設した事にには何も文句はない。

昔の睡蓮会には文句はないのだ。

沈黙を破った片桐は、せきを切ったかの様に話し出す。

「だが日本には豊富な資源があった。今でこそ資源がないだとか言っているが、それは輸入に頼った方が国の繁栄に繋がるからという理由なだけで、水産資源や水資源などは諸外国に比べれば豊富にあった。鉱石も金銀銅と全て取れる…私の言いたい事は分るね?」

「諸外国から国を守るための秘密結社の創設が急務だったんですね」

「そうだ。日本の領土はどれだけボロボロになろうが、世界から見ればまさに『黄金の国』なのだよ。近隣国は間違いなく日本の裏社会に確固たる地位を作るために続々と乗っ取りに来る。国を再建する為に国民が奔走しているだけでは駄目だったんだ。だから私は裏社会に大きな礎を作る事を決断した」

睡蓮会の歴史はこうして出来たのだ。全てはこの国の繁栄のため、戦争に負けたという事実からくる外交面での弱さを補うために作られた組織。

表向きは弱い立場でも良い。武力を持っていない国はどうしても諸外国からはなめられる。

だったらせめて国内の資源を守るための武力は持ち合わせた方が良いのだ。これ以上国を疲弊させるわけにはいかなかったから。

「私は睡蓮会を大きくする為に色々な事をしてきた。それこそ人には語れない内容の事も平気でしてきた…そんな私には今の睡蓮会を咎める資格はない。加害者が加害者を咎める術はないのだよ」

片桐の話を聞く限りでは自分の弱さを言っている様に聞こえるかもしれない。だが俺にはそうは聞こえなかった。

自分の責任は認める。だが後悔は少しもしていない。

そんな気概を片桐から感じた。

「私のような老人はもう治世に携わるべきではないのだよハヤト君。これからの未来は君の様な若者が決めるべきなのだ。私に出来るのはその協力のみ…だからこそ私は睡蓮会から身を引いた。私に代わる存在を統べてな」

「それが今の睡蓮会の幹部なんですか?」

「そうだ。世の流れがそう方向を決めたのならそうなるしかないのだよ」