神への挑戦

「理由は簡単だ。この組織は大きくなり過ぎているのが気に食わないのさ。俺は俺の立ち位置を正常に戻す事を望んでいる。まぁ君には分からないだろうがね…トップが多い組織では、リスクが多くなってくるのさ」

内藤はそう言うと、自分のデスクに置いてあるパソコンを開き、いじくり出した。

「ちょっと待っててね。情報の改ざんをするからさ。あと5分もすればリュウ君は俺の部下に変身するよ」

「それは助かるな」




「俺はそこで睡蓮会の中身を知った。必要悪とかいう体の良い理由を言ってはいたが、あんなのは人間のエゴだった。これが今の睡蓮会の内情ですよ…アナタはそれをどう思いますか?」

厳しい表情のまま俺の話を聞く老人。口を開く気配はないものの、俺の言葉を聞き、眉間に皺を寄せながら考えにふけっている様に見える。

「アナタが…アンタが睡蓮会を手放さなければここまでひどい組織にはならなかったんではないですか?なぜジンやゲンだけ助けて、ほかのガキ共を見捨てたんですか?」

俺の目の前に居る老人は、普通の老人ではない。

睡蓮会の名付け親。警察と政治家と極道を裏で結びつけ、戦後の日本を海外の圧力から守るための礎を築いた功労者。

「元睡蓮会最高顧問。それがアナタの肩書ですよね…片桐源十郎さん」

莫大な富と最上位の地位を自ら投げ捨てた戦後最大級の成功者。俺の目の前に居る人物はそういう人だった。

「その通りだ。私が睡蓮会を創設し、光と闇を結びつけた張本人だ」

重い口を開いた片桐、そう言うと姿勢を少し正して俺に向きなおった。

「君には分からないだろうが、戦後の日本はまさに地獄絵図だった。日帝時代の戦争のツケが一気に回ってきていてな…食糧は足りず、疫病は蔓延し、海外からは戦争の賠償を請求されている状態。ただ頑張るだけでは国は立ち直れる状態ではなかったのだよ」

戦後の日本の事は俺にはわからない。俺が生まれた時はまさにバブルの絶頂だったからだ。

日本は世界一裕福な国に変身を遂げた後だったからな。