神への挑戦

この老人は簡単には俺に情報を教えることはないだろう。

俺も情報の重みを知らないほど世間知らずでもない。睡蓮会の存在を知り、ジンの行動を見てきて嫌というほどそれを理解した。

情報こそ現代の武器の中で、一番のもろ刃の剣だ。

情報一つで簡単に人は死に、莫大な富をもたらす。

「…少し俺の話をしても良いですか?」

情報とは本来、信頼を経て得るものだ。一方通行の願いでは得れるものも得れない。俺が知っている情報と交換するのだ。

と言ってもこの老人と駆け引きをしても俺に勝ち目はないだろう。

それぐらい対面してみればわかる。この老人の長年に渡って蓄積された人生経験に、20年も生きていない俺の口述が勝てるとは思えない。

「うむ。聞いてみよう…」

視線を外に向けていた老人だったのだが、俺の真意を読み取ったのか、俺の眼を見つめながらそう返事を返してきた。

このやりとりで少なくとも俺を、未成年という名のガキという概念からは取り除いてもらえたと思う。

ここからが本番だ。真実を得るか、最悪の展開に進むのあかがかかった大一番になる。

「俺はジャッジタウンでマスターの役職をしている者です。3年ほど前にはジンやゲンとも係わりがあり、同じ時を過ごしていました。といってもジンやゲンとは敵対していたので、何度か争いをしていた間柄です。といっても仲間でもないし、特別思い入れがあった訳でもありませんでした。今回の事件が起きるまでは…」

この老人は今回の事件に係わりがあるのかどうかはわからない。でも老人に特別驚いた変化はない。おそらく俺の素性も何かしらの手段で知っていたに違いない。

君がハヤト君かというセリフからもそれが窺えたからな。

「未成年による麻薬密売事件。これが俺らジャッジタウンの存亡に関わる事件に発展したからこそ、俺はこの事件に関わりました。この事件の主犯にはジャッジタウンの何者かが係わっている可能性があると警察上層部からの証言が出てきたんです」