神への挑戦

その姿を目で追っていた老人は、目の前に置かれた茶を一度口にした後、俺を正面から見据えると口を開いた。

「…すまないがこの家にジンは居ない。気づいているとは思うがな」

妙に眼力がある老人は、厳しい表情のままそう言った。

「まぁ…そうでしょうね」

当ては外れたが、そうだろうとは思った。でも何らかの手がかりはこの場所にある。そうでないとゲンがこの場所を俺に伝えるわけがない。

「ジンやゲンはこの場所で育ったのですか?」

多分そうだろう。何となくだがそんな気がする。

「そうだな。この家で3年ほど暮らしていたよ…」

「3年?以外に短いんですね」

老人の言葉にそう言葉を漏らした俺。どう考えても18年のうちの3年は短すぎる。後の15年はどこで暮らしていたんだ?

「ときに青年。まだ名前を聞いていなかったな。聞いても良いか?」

「えぇ。ハヤトと申します」

よく考えると名前を名乗っていなかった。しかもこの老人の名前も俺は聞いていない。まぁ知ってはいるんだが。

「君がハヤト君か。随分と具合が悪そうだが、大丈夫なのか?」

「大丈夫です。お気遣いなく…」

「そうか」

そういうと老人はもう一度目の前に置かれた茶を口にした。

物静かな老人のようだな。そして厳格という言葉が良く似合う顔立ちと雰囲気を持っている。

ゲンに似た雰囲気を感じるのだが、ジンの様な物腰の軽さを少しも感じない。どっしりと構え、何もかもを受け切る様な武人の気迫がある。なのだが、考えを表に出すタイプでもない感じだ。

俺の知っているゲンとジンの能力を兼ね備えた老人に見えなくもない。

必要以上に語らず、思慮深く相手の出方を伺い、真意を見極め、信用に足る器なのかを探っている。

この俺をな…。