神への挑戦

当たり障りのない返事を返してみた。ジンが騒々しく逃げる事などないだろうし、何となくだが俺から逃げる様な事もしないだろうと思ったからだ。

多分ジンは俺と向かい合うことを望むはずだ。そしてそれすらも何かの目的に利用し、俺を事件に誘う。でもジンは俺の話を聞いたら多分驚くと思うんだ。

ゲンが死に際に発した言葉。それはジンの狂気を静める鎮静剤になるはずだから。

年配の女性が俺の前から姿を消してすぐだろう。女性は一人の男を引き連れ俺の前に戻ってきた。ジンが姿を現すと思っていた俺の予想は見事に外れた人物である。

それもその筈だ。現れた男は、年配の女性よりも年を行っているお爺さんだったのだからな。

「立ち話もなんだ。上がってくれ」

お爺さんは素っ気なくそう言うと、その場を引き返して行った。年配の女性は来客用なのだろうスリッパを俺の前に置くと、一歩後ろに下がり、壁際に立っている。

俺は家に入る前に松葉杖を外に放置してきていたので、痛む体を何とか気合いで支えながら、気丈に振舞うように心掛け、お爺さんの後に続いて中に入って行った。

何故か後ろから年配の女性が俺の後に続くように歩いてくる。普通は俺の前を歩くものだと思うのだが…深く考えないようにしよう。

退路を塞ぐ為だとも考えられるのだが、見た感じ俺をどうにか出来る人物には見えない。怪我をしているとは言え、年寄り相手に後れはとらん。

俺が案内された場所は、応接間と言える場所だった。今時珍しく座敷と言える場所である。

その場所にはすでに先ほどの老人が座り込んでおり、俺の後ろを歩いていた年配の女性は応接間に入ることなく一礼すると引き戸を締めてしまった。

俺は高級そうなテーブルを挟んで老人の向いの場所に腰を下ろす。

「…ジンは」

「話は茶菓子がきた後にしよう…」

老人は俺の言葉を遮る様にそう言うと口を噤んだ。少し待つと先ほどの年配の女性が、盆に和菓子や茶を載せて現れた。老人と俺にお茶を差出し、茶菓子をテーブルの真ん中に置くと、また一礼して応接間から姿を消した。