夢を見ていた。

こんな切迫した状態が続いていたのに、転寝をする俺は、トップとしてどうなんだろうな。

でもそのおかげで、昔の記憶を映像として見ることが出来たよ。

やはり俺は昔と変りない。

罪悪感とかそういった代物を何も持ち合わせていないという事を今更ながら理解した。

目を覚ますと、俺の向かいの席にはシンジの姿があった。

「どれぐらい寝てたかな?」

「ほんの30分程度ですよ。まだジンさんからは連絡が入ってきてませんよ」

シンジはそう言うと、暗い部屋の中で光を発しているテレビに視線を送っている。テレビでは、緊急特番を組まれており、椎名製薬工業の襲撃及び、立てこもり事件を特集していた。

「そうか。中の様子はどんな風なんだ?」

「中は作戦通り、立てこもりを貫く体制を取っているようです。そろそろ第二陣の連絡が入るとは思いますが…」

そんな話をしていると、シンジの携帯電話に着信がかかってきた。シンジはそれを取ると、通話を始めた。

シンジは少し会話を続けると、電話を切り、そしてジンの方に振り向く。

「無事睡蓮会本部に侵入を果たしたようです。ジンさんにリュウ…そしてハヤトの3名です。残りの突撃班は、無事に引き返したようです」

「成功したか…これからが問題だろうね。それとシンジ。無理にゲンの事をジンと呼ばなくれも良いよ?今は俺と二人だけなんだからさ」

ジンはにこやかな笑顔をシンジに向け、そう話す。シンジはそんなジンの様子を見ても表情を崩さず、顔を横に振った。

「念のためですよ。私たちの仲間であったゲンは、死んだ事になっているんですから…それに割り切った方が、気持ちが楽なんですよ」

これから起こることを予期しているのか、シンジはそう言った。ジンはシンジの気持ちを理解しているのか、それ以上そのことについて聞くことはなかった。

「これもアイツの意思だから仕方がないよ。俺の指示でもあるけどな…」

「ジンさんの指示ではないでしょう。ゲンとして生きる事を辞めたのはあの人の意思だったんですから」