神への挑戦

「ミストの目的はおそらく睡蓮会を潰す事にある。だが睡蓮会ほどの巨大な組織を完全に潰す事など不可能に近い事。それはミストのトップに居る人間も解っているはずだ。だとしたら他の方法でミストは、睡蓮会に圧力をかける方法を取る。そしてその方法で一番効果的な方法があるとしたら…」

ここでエースは一度言葉を切った。そして続きを話しだす。

「組織のトップを暗殺する事だろう。暗殺はもっとも効率良く組織を崩壊させる行為だからだ。動物も腕がなくても生きていけるが、頭をなくしたら生きていけない…組織のトップを殺す行為は、組織の上下関係を著しく変化させ、組織としての機能を殺す効果がある」

睡蓮会本部に進行したミストは、その時本部に居た大幹部の二人を殺していた。攻撃を仕掛けるにあたり、弊害になった過程で殺害したと考える事も出来るが、おそらくそんな短絡的な考えで起こした行為ではないとエースは考えた。

用意周到に侵入し、事を運んだのだ。その目的の中に幹部二人の暗殺も含まれていた。

それが第一の目的だと考え、ミストの行動を振り返ると、それだけだと少し物足りない。多分第二の矢を用意してくるはずだ。

ジンは死に、ミストのトップが喪失したこの状況だが、目的を遂行する為にはまだまだ物語が終わるには早すぎる気配を感じる。

それにミストを語る上で重要参考人であるリュウは存在を確認出来たが、まだ一人だけ表舞台に姿を現していない男も居る。

それはジンの側近であるはずのシンジだ。あの男だけはまだ地下に潜り続けている。全てが終わったと考えるには早すぎる。

大人を欺き、国家を欺き、存在を隠し、生き続けていた亡霊ジン。国籍がないジンはこの世界で存在を認められていない。情報化社会の中では異端なる存在…。

そんな男に見入らされ、魅せられ、この男の背後についた若き青年達。大人の考えの裏を突いてくる行動は、時にエースすらも出し抜く策謀を持ち合わせている。

こんな中途半端な形で完遂だとはとても思えないのだ。

だとすると第二の矢が存在するはず。それはおそらく睡蓮会の大幹部暗殺…。

これがジンの用意した睡蓮会への抑止力だとエースは考えたのだった。