するとヒサジの隣に座っているサヨが、ヒサジに寄り添うように寄りかかった。近くには誰も居なく、二人きりの状況になったので、サヨも遠慮がなくなったのだろう。

普段の二人はこうして寄り添う様に座る事が多かった。

「大丈夫だよ…ね?」

「あぁ。お節介はこれぐらいで十分さ…」

寄り添ってきたサヨを抱き寄せたヒサジ。サヨはヒサジの腕の中にすっぽりと納まる…。これが二人の距離感なのだ。

「何か良いなぁ…」

「良い?」

「うん…美男美女で羨ましい」

「え?…そうか」

何とも嬉しそうに話すサヨ。言葉には出さなかったが、お前がそれを言うか?と考えたヒサジであった。




「これがリストね…これでようやく俺の出番が出てきた訳か」

ハヤトが目を覚ますより前の時刻。朝早い時間帯に、男は誰かに何かを受け取っていた。

「えぇ。それと作戦なんですが…予定通り滞りなく進んだ様です」

「そうか………滞りなくか」

男は喜んでいる様にも辛そうにも見えない仮面の様な表情をしていた。言いかえるなら、人形の様な中性的な表情をしている。

長い髪を自然に伸ばし、女性の様にサラサラな髪質をしている男。

「解ったよ。これから先は俺の仕事さ…俺が決着をつける」

男はリストに目を通し、静かに闘志を燃やす。高ぶる気迫が、冷徹なる視線を呼び起こす切なる気迫。

それを携えた男が一人ついに動き出す。

「神は死なない。ジンは甦るのさ…」

死してなお蘇る男。堕天使ジンが確かにそこには居た。