マリコがハヤトにお願いした条件。それはどんな短い時間でも、毎日電話をして話をしたいという事だった。そしてその約束は、この3年間一度も破られた事はない。

何だかんだでハヤトはマリコと電話をし続けていた。些細な出来事やら口げんかやらを…。

そう…ハヤトは毎日マリコとの電話を欠かさなかった。

それに少ない休みを見つけては、実家に帰省する事もハヤトは忘れなかった。ヒサジに会いに行く事よりも、タケシの居場所を突き止める事よりも優先して、マリコに会いに行っていた。

それに浮気の様な事もハヤトはしていない。元々女にそこまで興味を持ってないハヤトは、浮気をするタイプではない。女が好きなのではなく、マリコが好きなのだ。

思い返すとマリコにも実感はあった。自分が愛されていると確信している…。

デートもいっぱいした。思い出もたくさん共有している。

マリコが身体を求めた時も、ハヤトはしっかりと応えていた。昔は自分の強さにこだわり断っていたのに、ハヤトは応えていた…。

それは自分の気持ちに正直になった事の現れ…。最近では、マリコが言わなくても気持ちをくんでくれる事も多くなった。

しっかりと幸せを実感出来ていた。だからこそ、ハヤトの拒絶が堪えた…。

自分の知っているハヤトが…今まで築き上げてきたハヤトとの思い出が壊れた気がしていた。

でもヒサジの言葉でマリコの中のハヤトとの思い出が、再構築された。自分は愛されている…その結果出たハヤトの言葉。

そう信じたい気持ちが強くなった。

「私…ちょっと行ってくるね」

マリコはベンチから立ち上がると、病院内の方に走って行った。その様子を見たヒサジは少し満足そうな表情を見せると、ベンチに腰掛けているサヨの隣に座った。