神への挑戦

言葉が出ない。そんな印象を受けるマリコの表情。

そして俺の顔にゆっくりと顔を近づいてくる…。

「…私が解る?」

…どういう事だ?……予想外な質問だ。

取りあえず頷く。声がうまく出ない事は自分の体だから、容易に解る。頷くぐらいの事は出来る自信はあったし、マリコにも多分意図が伝わるだろう。

「私が解るのね?…うん。解るよね?そうなんだよね?」

文法が多少おかしいマリコの話し方。多分動揺や何やらで頭と言葉がリンクしていないのかもしれない。

頷く事しか出来ない俺は、先ほどと同じ様に頷いて見せた。するとマリコは何度もうんうんと言葉を言いながら頷くと、俺の頬に自分の頬を寄せながらしくしくと泣き出した。

「良かった…本当に良かった。良かったよぉ…」

どうやら俺は……自分が思っていた以上に、マリコを悲しませていたようだ。

こんな泣き顔を見る為に、俺は仕事をしていたのか?自分が納得したいが為に、自分のしたい事をやって、心配をかけて……俺は俺が欲しかった答えを一応掴んだ。

それはひどく残酷な答えだった。そしてそれは、今の世の中で非常に必要な事だと知り、何とも言えない歯がゆい思いを感じたんだ。

必要なら何をしても良いのか…そんな答えを俺は見た。

目の前で人が何人も死んだ。それこそ感覚がマヒしていたかもしれないが、それが普通だと思わせるような場所であった…。

とてもマリコに話せる内容ではない。でも…俺はマリコに話さないといけない時が来るだろう。伝えないといけない。

俺も罪を犯した一人であるからだ。

マリコは俺の顔をしばらく茫然と眺めた後、誰かを呼びに行った。おそらく医師か看護師を呼びに行ったのだろう。

少し待つと、一人の医師と看護師が俺の元に来た。

「そう言えばお友達が病院に来てましたよね?伝えに行った方が良いのではないですか?」

「そうだった…ヒサジ君とサヨちゃんも来ているんだった。待っててねハヤト。すぐに呼んで来るから」