ここはとある病院内。

時刻は朝の8時を過ぎたあたりで、今日は雲一つない快晴の天気だ。朝日が病院内を綺麗に彩っていおり、病院内を明るい雰囲気にしていた。

だが、そんな雰囲気とは似つかわしくない空気を発している二人がこの病院に居た。

「ねぇヒサ……何でこんな事になったの?」

「………」

その二人とはヒサジとサヨだった。ヒサジは固く眼を閉じ、俯く様にしてイスに座っている。そんなヒサジとは対照的にサヨは、目に涙を浮かべながらヒサジに話しかけている。

「ねぇっ。どうして?」

返事を返さないヒサジに再度問いかけるサヨ。

「ちょっと黙ってて…」

重い口を開いたヒサジだったが、その言葉はサヨを突き飛ばす様な言葉だった。この時はいつものサヨを見守る様な優しさはなく、ただそっけなく突き放すのみだ。

この場に居るヒサジはいつものヒサジではなかった。

「うん……ごめんね」

サヨはそう言うと、口を閉じ俯く様に下を向いた。その顔には悲しみの表情が浮かんでおり、小さなきっかけで目じり溜めた涙が落ちようとしている。

この時ヒサジは、自分の中でどうしようもないほどの憤りを感じていた。

自分にも責任の一端はあると感じているのだ。この様な事態に発展した一端が自分にもある…そう感じずにはいられなかったのだ。

膝に肘を突き俯くように下を向いているヒサジ。その両手は血管が浮き出るほどに力を込めており、今にも手の平から血がにじみそうなそうなほどだった。