神への挑戦

椎名工業本社ビル内は、外の騒々しい騒ぎとは正反対に、静かなものだった。エースが居る部屋の中はもちろん、外の通路からも何も音が聞こえてこない…。

この場所が最上階に位置しているので、ここまで物音が聞こえてこないと考えても、静かすぎるとエースは感じていた。

適当にソファーに座りこみ、持っていたタバコを吸いながらシンと到着を待っていたエースだったが、タバコが吸い終わる前に応接室のドアからノックの様な音が聞こえてきた。

「お待たせしました」

「別に待っちゃいないさ。早すぎるぐらいだよ…タバコがまだ途中だからな」

エースは自分の持っているタバコをシンに見せつけながらそう答える。確かにエースのタバコは半分も吸っていない状態である。

「吸いながらで結構ですよ。それでは要件を聞きましょう…この場所に何を求めて来たのですか?」

シンは表情を変えることなくそう答えると、エースが座っていたソファーの前にあるソファーに腰掛けた。シンの服装は相変わらずの白いロングコートを着た状態で、ハヤトの言っていた服装と全く一緒だった。

「そうだな…まずはジンとハヤトはこのビルの中に居るか?」

先制攻撃と言う様に、エースはシンに聞いた。

「答えられません」

シンはエースの質問にはっきりと答えられないと話す。だがシンの受け答えも、エースの想定の範囲内だった。

「なるほどな…やっぱりもう、睡蓮会の本部に向かっちまったのか」

「…なぜそう思うのですか?」

エースの何もかも悟った様な口調に疑問を覚えるシン。目の前のエースと名乗る男の考えが読めないのだ。

「まぁ色々とな…現場の状況と睡蓮会の情報を照らし合わせると、ハヤトとジンがこのビルの中に居ないのは推測出来るからな。それにもしこのビルの中に居たとしても、それはそれで問題ないし…」

(命の心配って話だけどな…)

エースがこの場所に来た一つの目的は、自分の推測の信憑性を高める為だ。