神への挑戦

いつだったかエースは、ジャックに話して聞かせた事があった。

自分の生い立ちや出生の事は話したがらないエースだったが、ナイフを手にした経緯を話したんだ。

「俺は見ての通り腕力には自信がない。俺が身体を鍛えたところで、素手ゴロが強い奴には敵わないんだよな…でも俺は力がないと生きていけない環境にあった。その時俺は、牙を持たない動物は他の牙を用意するしかないと気づいたのさ」

自分の体を磨き、力を身につける方法もあれば、他の代用品を磨き、力を身につける方法もある。ルールのない戦いの場合、最後に立っていた奴が勝者だ。

エースのナイフ技術もまた、生き抜く為の術なのだとエースは話す。

「俺の知っている限りでは、ナイフ以外にも武器全般を扱えるはずだぜエースは。どこで習ったのかは知らないけどな…」

ジャックはエースの過去を知らない。ジャック自身はエースの過去にそれほど興味もなかったから聞かないのだ。

逆を言えばエースもジャックの過去を知らない。お互いがお互いに過去について触れないのが、二人の言葉に表さない決めごとだからだ…。

「そうっすか…でもまぁ、エースさんは優しい人ですからね。それに頼りにもなる」

「あぁ…少し怖いぐらいにな」

時間は流れに身を任せると短く感じる。だが、待つ時間はそれに等しく短く感じる事はなく、永遠に感じるほど長く、それでいて退屈な時間だ…。

それでもジャックとドラゴンは、束の間の休息を時間に身をゆだねる事で、時間の経過を有意義に使っていた…。