神への挑戦

ジンは手元の腕時計を確認しながら通路を進み、微笑みを携えながら前へ進んでいた。リュウは一応周りを警戒しながらジンの前を歩いている。

「地下に組織を構える利点は非常に多いが、欠点も同じぐらい多いのさ。この状況もまたその欠点でもある…地下に通路を作ると言う事は、それだけ時間も労力も必要になる。それに、通路が限られているのだから、人員の補充が困難にもなる訳だ…つまりは、他の地点で陽動を起こし人員の補充をさせない様にすれば、この状況を演出する事が出来るのさ」

地下に組織を構えると言う事は、外とは違い、空間を確保する事から始めないといけない。地震が多い日本という地形を考えると、耐震強度を考え空間を確保しないといけないので、どうしても単調な作りになる。

複雑な通路を作りたいと考えても、それを可能にするには莫大な金がかかるし、口の堅い人間を複数雇わないといけなくなる。それはこの通路の実用性などを考えると、利害が一致しないと考えられる。

「俺の調べでは、椎名製薬工業は睡蓮会の玄関としての役割も担っていると解った。だから東京の各拠点を襲撃し、警察沙汰の事件に発展させたのさ。現場検証が終わるまでは、たとえ身内でもうかつに近づく事は出来ないからね…」

「東京にある工場を全て襲撃しただと?お前、そんな事までしたのか?」

ハヤトはニュースを見ていない。なのでジンが、椎名製薬工業の工場を襲撃した事を知らないのだ。ジンはハヤトの驚いている姿を見ると、ハヤトに気づかれない程度に笑みを浮かべる。

ハヤトは知らないのだ。ジンは椎名製薬工業の『全て』の工場に襲撃をかけさせた事に。

「それだけの準備が必要だったのさ。そうじゃないと、こんな場所まで来れないしね」

ジンはまだハヤトに隠し事をしている。それは、椎名製薬工業を襲撃した本当の理由とも直結している出来事を…。

ハヤトがその本当の理由を知るのはまだ少し先の話だった。