神への挑戦

銀次がジャックの元に向かっていたので、手遅れの状態でなければ大事には至らないと考えていたエースだったが、何も心配していなかった訳ではない。

ジャックの声を直接聞けた事で、エースの心配事が一つ減ったのは安堵した表情を見れば明らかだった。

「でもランがかなり酷い怪我を負ってしまった。命に別状はないが、しばらくの間は安静が必要になるかもしれない…」

「そうか…銀次はどうしてる?」

ランが怪我を負ったという知らせはエースにとって、出来れば嘘であって欲しい情報だった。だが、命に別状がなかっただけ、幸いだとエースは思っていた。銀次の前情報で、ランの居た場所が暴力団関係の事務所だと聞いていただけに、最悪は回避出来たと考えたのだ。

「銀次は一人でマンションに残ったよ。情報を引き出すつもりなのかもしれないな…」

「アイツ一人で残ったのか?まぁ、銀次なら問題はないか…アイツも昔みたいな無茶な事はしないと思うし」

「いや…結構無茶な事しているかもしれない。拷問まがいな事をしている可能性が高いと思うし」

マンションでの銀次の戦いを思い出したジャックは、そう言葉を漏らす。容赦のない銀次の暴力は、ジャックからすれば有り得ない行為だったので、そう思ったに違いない。

「拷問って言っても、骨の一、二本程度でしょ?それぐらいは普通だよ。相手は堅気じゃないんだから、普通の尋問じゃ何も喋らないと思うしね」

この時ジャックは、エースの中での無茶の基準が解らないと思った。どんな行為をすれば、無茶な行為になるのか…とてもじゃないが、怖くて聞けない。

「そう言えばエースは、椎名製薬工業の本社に居るんだよな?いまどんな状況何だ?」

「あまりよろしくない状況だな。未成年たちが入り口を封鎖していて、こちらからは何も手が出せない状況だ。交渉も難航しているみたいだし…」

エースは目の前で繰り広げられている状況を見てそう言葉を漏らす。篭城を決め込んでいる未成年たちの要求は、今のところ何もなし。ただ人質を取り、こちらの用件を無視し、現状を維持しているだけだ。