「俺達って何なんだろうね…」

幼い子供が、年齢に似つかわしくない言葉を口にした。

綺麗な顔をした同じ顔をした子供。背格好も声も髪型も全てが同じ二人の子供は、晴れ渡った空を見上げ、言葉を交わしていた。

「たぶん俺達は選ばれたんだよ…」

「選ばれた?誰に…?」

「魂にだよ…人の帰る場所。その場所に居る俺等の友達…その友達が俺等を選んだんだ」

選ばれた二人の子供。帰る場所…そして向かうべき聖地。

「ねぇ兄さん。いつかあの場所に戻る日が来るのかな?」

「そうだね。俺等の居場所はあそこと魂が帰る場所…そこにしかないからね」

残酷な未来しかない幼い少年の切なる願い。それは自分たちの存在を否定し、見を犠牲にし、始めて到達出来る険しき道のり…。

「俺等は死人なんだよ。この世に存在が認められていない人間は、幽霊よりも無に近い存在…だから俺等は、あの場所に帰らないといけない」

「兄さん?どう言う意味?」

同じ顔をした子供の一人が、隣に居る同じ顔をした子供の言葉が理解出来なかったみたいで、疑問を投げかける。

「ふふっ…ごめんよゲン。少し難しかったかい?取りあえず難しい事は俺に任せてゲンは、俺の言う通りにしてくれれば良いよ…後は俺が考えるから」

「ダメだよ兄さんっ。俺も一緒に考えるっ!」

傍目から見れば、二人は仲の良い普通の子供。でも二人には国籍がなかった…。

両親も親戚も自分の名前すらない…。

あるのは生きる為の目標と、それに向かう為の希望のみ。

ジンとゲン…6歳の時の出来事である。