ジャックがそう呟くのも無理はない。なぜなら、目の前に広がる光景は、オフィスビルやコンビニ、それ以外にも美容室や飲食店などがある、いたって普通の町並みが広がっているからだ。

「俺も最初はそう思ったさ。でも、このジャッジタウンという規格外な場所で、こんな普通の場所がある事自体が、かえって不自然なのさ。でもまぁ、今回の目的とは主旨がずれるから、説明はまた機会があった時にでも話すよ」

エースはそう言うと、携帯電話を取り出し、電話をかけ始めた。

どうやら、目的の人物に連絡をとり、どこに向かえばいいか、説明を聞く気のようだ。

「…解った」

エースは、みじかく要件だけを話すと、電話を切り、ジャックに話しかけた。

「このすぐ近くに、俺が会おうとしている奴の家があるんだ。これからそこに向かうよ…どうやら、そこにもう集まっているようだ」

「そうかい。じゃあそこに向かおう…」

ジャックは今日のスケジュールは全部、エースに任せる気でいるので、反論は何もなく、素直にエースの指示に従った。

というよりも、ジャックは人より知識欲が強い方なので、今回のジャッジタウン訪問をかなり楽しんでいるようだ。

エースとジャックは、複合地区の町を歩き、とある住宅街の様な場所に到着した。その場所は、出来て間もないのか、外壁の塗装が鮮やかなパールホワイトで統一されており、他の建物とは、一線を置いて、新しい印象を受ける。

そんな建物に、エースとジャックが入ると、エレベーターに乗り、最上階に向かう。そして、『前田』と書いている表札の前に着くと、インターフォンを押した。

そして家のドアが開く…。

「よう。久しぶりだなエース…二年ぶりぐらいか?」

出てきた人物は、鮮やかな金髪を無造作に伸ばし、下品でない程度にヒゲを携えたエース達と同年代の男で、見方によっては、ホストの様な印象を受けるが、そうとは思わせない何とも言えない存在感を放っていた。

「もう、それぐらい経つかもな…それよりも『銀二』。お前に言われた通り警備員に話したら、すげぇ変な顔で見られたんだけど」